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5. ゴーストタウンからの着信

誰もいない街に私は突っ立っていた。本当に、水晶玉の向こう側には別の世界が存在していて、しかしそこは、私にとっては少しばかり寂しすぎる風体をしていた。何の気なしに拾って部屋に何と無く飾っていた水晶玉に気が向いたのは、やはり、彼女から水晶玉のうわさ話を聞いたからだ。そこからの展開は早く、あっさりと私はこの場所に行き着いた。早苗、という不思議な幼女にも出会い、ここが自分の空想から作られた世界であり、この現象には理論は通用しない、経緯のみが重要であるという説明をとくとくと聞かされた。だけど、ここの想像主が私だと言うのならば、それは甚だ疑問である。私にはこんな、ゴーストタウンのような街並みを夢見ていた覚えはない。私は、外に出て、人と触れ合いたかったのだ。陳腐ではあるが、みんなが私に親しく接してくれる、しかもそこは自然に囲まれていて、川沿いや森の中を誰かと一緒に共有する、そんな世界を夢見ていた。だから、夢先案内人と名乗った彼女の説明は、私の意に反している、と思う。夢先案内人曰く、この世界を生んだ想像主の力があまりにも強かったために、皆の空想の行き先がこのゴーストタウンになってしまって\xA4

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もうすぐ朝が来る。カラスの鳴き声はこの街並みの風体にとても似つかわしく、空を見上げると、雲の下から顔を出そうとする太陽のうっすらとした陽光で、灰色の空が段々と薄赤色に染まり始めていた。朝焼けの空の下、世界には人一人いることはなく、ちょっと寂しすぎるんじゃないか、と思うくらいに廃界と化している場所。僕が強く望んだ世界...は、ここまで閑散とした世界だったのだろうか。一人でいられるのは気楽でも、僕は単純に人付き合いが苦手であり、その延長線で引きこもりがちになり、いつしか病院に通い、クスリというものを飲むようになった。そこからは、劣等感に苛まれる毎日だった。僕は街の歯車として機能していないのに、時々誰かに話しかけられ、しかし素性を言えるわけもなく、孤独の堕落へと堕ちていく。違うんだ、僕は、そんな褒められるような人間じゃない。優しさに触れる度にそう思わされる現実が辛かった。雑踏の中、手を繋いで幸せそうに歩いている男女が軽薄そうに見えていても、同時に羨みが僕を襲い、こいつらだって街を廻しているんだと思いつつ、同時に、こいつらにとっての幸せなんて、不幸せなんて、僕に比べたら大したこ

とないんだろう、と結局は羨みとしての情けない逆ギレを心の中でしまう。

要するに、多分、僕は現実の全てから逃げたかったのだろう。だからこんな場所に行き着いた。現実逃避の念から生まれた誰もいない世界。自分らしいな、と我ながら思いつつ、しかし人一人いない街並みを、はて僕は望んでいたりしていたのだろうかと疑問符を抱く。僕は誰かと話がしたかった。親しくなりたかった。いつか満たされるのだとまだ自分と他人を信じ、しかし自分から幸福を掴もうとはせず、向こうからやってくるのをただだらだらと待っているような人間。ここが早苗さんの言う通り、イマジナリータウンというのならば、些か思い通りに行っているとは言い難かった。ちょっと、違うんだよなぁ...。それに、僕の創造力が強すぎてこの世界の秩序が乱れているなんて、そこにも疑問符が浮かぶ。なんか、中途半端だ。そんなことを考えながら歩道をふらふらと歩いていると、僕の目に人影が映った。夢先案内人、早苗さんの影ではない。早苗さんが言う所の、僕の空想に入り込んでしまった人だろうか。いや、そうじゃないと、誰もいない街に誰かがいることはどう考えてもおかしかった。やばい、僕は恨まれるべき対象になってしまう。どうすればいい、どう振る舞

えばいいのだろう。

「...あの、わたし、きな子って言います。ちょっと事態を把握しきれていないというか、ここがどこだかわかりますか?」

きな子、と名乗る少女は少しほっとしたような顔をして、さらっと難解な質問を投げかけてきた。ここがどこなのか、早苗さんの言うことは正しいのか、そもそもここは宇宙のどこに位置する空間なんだ、アインシュタイン相対性理論もなにも意味を持たない空間ってことは、「無いが在る」というあまりにも突飛な事象であるし、壮大に言えば、水晶玉はもう一つの銀河系だと言えなくも無い。そして、僕もどうしてここまで人気のないゴーストタウンに入り込んでいったのか、疑問符を浮かべている。自分が他人の空想を集約してしまうほどの力があるとも思えないし、そんなことを望むわけもなく、イマジナリータウンが望む通りの世界を作り上げるというのならば、その時点で早苗さんの話が破綻しかけている。僕も、正直よくわかりません。そんなようなことを、きな子さんという少女には伝えた。

「私も似たような心境です。もともと引きこもりなんですが、私にとっては、えーっと...あなたの名前は...」

「一之江一。一二つもついてるから、小さい頃よくからかわれましたよ。」

「変わった名前ですね。それで、ニノ一さん、私にとっては今いる空間みたいに外の景色が見えていたんですよ。人が沢山いるのに、誰もいないみたいな。それは私がそこに含まれていないからなんでしょうけど、とにかく、だから、私とニノ一さんの求める世界はきっと間逆です」

「そんなことは、ないよ...。僕は、ただ誰かと繋がっていたいだけなんだ。誰もいない、そこまでは望んでいない。これじゃあ現実逃避をするための世界を作り上げたみたいなものだから、今はとってもナーバスで...帰り方もわからなければ、僕のせいでたとえばきな子さんがここに誘われてしまったとは、やっぱり思えない。きな子さんの空想だって、僕くらい、いや、もっと強いかもしれない。それなのに釈然としないゴーストタウンを作り上げた僕が、イマジナリータウンの秩序を乱しているんだろうか...」

そこまで言って溜息をつくと、きな子さんが「現実に帰るかなぁ」とぼそっと口にした。帰り方なんてわかるわけないのに。わからないことを聞いてくれる存在は、そりゃあもう一人しかいないよねと、多分同時に思ったのだろう。お互いに顔を見合わせたあと、僕らは早苗さんを探すことにした。すると、受信機能など無いはずの公衆電話からベルの音が鳴り響き始めた。受話器を取る。

「はい...もしもし?」

「あー、もしもし。俺さ、いまちょうど、夢先案内人ってやつを探してるんだ。好き放題やり過ぎだから、ちょっと懲らしめてやろうと思ってね」

好き放題?懲らしめてやろう?

「俺にとって特別なイマジナリータウンを、いや、この世界のルールをあいつは捻じ曲げようとしてやがる。そこにきて、オレはあいつと同類だからさ。オレが対処するし、説明もするから、三人で早苗を探すってのはどうだい?」

僕らは彗星の如くあっさりと乗った。

夢先案内人さがし。誰もいないゴーストタウンの様なイマジナリータウンで、いや、もはや誰もいない街ではなくなった街で、僕らは早苗さんを探すことにした。

「んじゃあ、体育館で待ってるよ。ニノ一と、きな子ちゃん」

きな子さんは「?」と口に出しながら首を傾げ、僕はただひたすらにわけがわからなかった。